我がまち川崎は日本有数の産業都市として発展を遂げ、長年にわたり日本の中核として産業をリードしてきました。その反面、公害のまち川崎とも言われてきましたが、今では芸術、文化、スポーツのまちへとイメージを変貌させ、全国の政令指定都市の中では最も小さい面積でありながら、人口減少と言われている我が国においても、未だに人口が伸び続けている素晴らしい都市であります。人口は147万人を超え、人口数全国第7位の都市にまで成長を遂げ続けております。都道府県庁非所在地のまちでは最大かつ唯一100万人を超え、川崎市内総生産は5兆円となりました。そして、川崎は南北に細長い地理的な特徴が活かされ、市内各地に中核的なまちが生まれ、各地域が発展して参りました。南部には東京湾が広がり、京浜工業地帯の過去の公害のイメージは払拭され、近年では東京との近さ故に一気に近代化が進み、若者のまちと言われるようになりました。特に川崎駅前周辺は昼夜を問わず人が多く活気に満ち溢れております。また、羽田空港から車で10分という立地を生かし、京浜工業地帯の殿町地区が国家戦略特区に指定され、日本の健康、医療、福祉、環境を中心に、世界最高水準の研究開発から新産業を創出するオープンイノベーション拠点となっております。さらに、北部の多摩丘陵部には自然が多く残っており新興住宅地も多く、南部とは異なり川崎は多様な面を見せています。
川崎は右肩上がりで人口を伸ばし、都市として発展し続けています。しかし、成熟してしまった都市であるが故に、先人達が持たれていたまちの発展に対する情熱が、現在の若者には欠けているのではないでしょうか。まちへの関心が徐々に希薄になっていることは、選挙時の投票率の低さを見ても明らかです。過去を振り返れば、いつの時代も地域を牽引し続けてきたのは若者でありました。若者が地域への愛着を失い、自分達が住み暮らすまちに明るい夢や希望を持つことができないということは、この川崎のこれ以上の発展はないといっても過言ではありません。昨今、我が国全体として少子高齢化が進んでいる中、高齢者世代と次世代の間に立ち、地域という襷をつなぐ我々責任世代の役割は重要であると考えています。我々川崎青年会議所は、様々な世代の一層の社会参画を促します。そして、青少年の育成を充実させることで、社会で自立していくための、資質、能力の向上を図り、将来の川崎を背負って立つ人材育成に努めます。様々な世代の市民のまちへの関心を喚起することで、我々の掲げる明るい豊かな社会の実現に近づけると確信しています。
【まちづくり】
川崎青年会議所では、日本に伝わる伝統文化を継承していく事業として川崎大師御供茶式とお茶会、青少年対象事業としてはミニバスケットボール大会等が存在します。当時からの継続事業をよりブラッシュアップすることにより、現代の時代に適応したものへと変化をさせ、より精度の高い運営を行い、より多くの市民の方々へ運動を発信していきます。また、本年度はまちづくり事業として、川崎市や関係諸団体等との連携を密に行い、川崎のまちづくりの運動の調査研究を行い、手法、プロセスを含めたイノベーションを計っていきます。そして、市民の皆様が今どのような社会を望んでいるのか、どのような未来を描いているのかを対話を通じながらニーズを模索し、川崎の歴史文化に更に磨きをかけて、川崎という地域を誇りに思える市民参画型事業を展開していきます。
【組織運営と発信】
総務や広報は組織を規則正しく運営、発信していく上で大変重要であります。特に総務は、組織やメンバーを支える心臓部であると考えています。青年会議所においてメンバーは、数多くの会議を通して事業構築をしていく過程を通じ、様々な学びと経験を得ることができます。そして、メンバーが得た経験を地域に還元することで、若きリーダーとして地域を牽引していきます。組織のルールである定款及び規定の精査、一般社団法人として会計の透明化を図ることは勿論のこと、開催される全ての会議の意義をメンバーと共有し、積極的な参画を促します。広報は、我々の運動を一人でも多くの方々に、素早く発信していきます。さらに、ホームページやSNSを活用した発信にとどまらず、あらゆる観点から広報計画を検討し実施していきます。各メディアと接触する機会を増やし、川崎青年会議所としてのメディアでの露出機会を増やすことにより各事業の支援を行うことで、市民の地域への関心を高め、明るい豊かな社会の実現を目指します。
【出席率と渉外活動】
メンバーの例会出席率の向上は、川崎青年会議所の抱える継続的な課題であります。本年度も昨年同様に出席率の向上を目指すと共に、青年会議所の意義をしっかりと伝えていきます。メンバーの出席率の向上は、組織の強靭化に必要不可欠であり、メンバーにとりましても、学びの機会を得ることとなります。また、渉外活動となる各種大会への参加は、メンバー間の交流をより一層深め、新たな価値を生むことができる素晴らしい機会となります。本年度は、海外に目を向けるとオランダ、モンゴルでの国際大会があります。国内でも年初の公益社団法人日本青年会議所が開催する京都会議を皮切りに、さいたまでの全国大会、つくばでの関東地区大会、神奈川県内でも茅ヶ崎での神奈川ブロック大会等各協議会の事業が目白押しです。川崎という枠にとどまることなく、より多くのメンバーで参加し経験することで、川崎の事業だけでは決して得ることができない価値を発見し、メンバー自らの可能性を広げます。地域市民の一人としてメンバーの可能性を広げることは、まちの可能性を広げることであります。メンバーの成長を明るい豊かな川崎の未来へとつなげます。
【会員拡大】
青年会議所の原点はまちづくりであります。崇高な理念を掲げ、日々労を惜しまず運動し、まちづくりを考える市民を育成することが我々運動の意義であり、その運動を通じて人づくりをすることが使命であります。近年、各地の青年会議所でもメンバー数の減少、入会歴が浅く青年会議所自体の魅力を実感できないメンバーの増加等が課題となっております。我々と同じ志を持つメンバーを一人でも多く青年会議所に入会させることが、明るい豊かな社会の実現への近道であり、組織の強靭化につながるのです。会員拡大は青年会議所運動の本質であり、決して挑戦を止めてはならない最大の運動であります。本年は会員拡大に特化した事業を多く展開し、147万人都市に恥じない組織体制の構築を目指します。新入会員については、入会初年度は配属数がもっとも多い会員拡大の委員会に配属され、入会当初の段階から会員拡大の必要性を学び、経験のあるメンバーとの交流や研修を行い組織全体で育成に努めます。地域への愛着と発展への情熱を持つ若者を増やすことで、明るい豊かなまちを築いていきます。
【結びに】
「とにかくやってみなはれ。やる前から諦める奴は、一番つまらん人間だ。」
これは、今から55年以上前の、第1次日本南極地域観測隊の越冬隊長である、西堀栄三郎の有名な言葉であります。私が2年間にわたり日本南極地域観測隊として南極昭和基地での任務に当たっていた際にも、代々受け継がれていた教えであります。我々青年会議所運動も、まさにその言葉の通り、やる前から諦めるより、まずは挑戦すべきであり、挑戦を決断した者だけに、青年会議所の掲げる、「奉仕」「修練」「友情」の三つの信条のもと成長できるチャンスが与えられます。我々の私生活の中において、あまりにリスクが大きく挑戦することが許されない場面であっても、青年会議所運動だからこそ、多少のリスクが伴っていても挑戦することが許されます。その様な素晴らしい団体ではないでしょうか。是非一人でも多くのメンバーが、様々な経験ができる環境づくりに邁進していきます。
人は弱いものです。人に優しくあろうと思いながらも自分だけは傷つかずに済みたいと思う。嘘はいけないと思いながらも、少しくらいはいいだろうと手を抜く。誰も見ていないところで、その手を抜きたがる自分と勝負しているのか。その勝負の勝敗は、天知る、地知る、我知る。他の誰が見ていなくても、天も地も見ているし、何よりも自分は見ています。本気で次世代の若者に豊かな世の中を継承したいと思っているのならば、一瞬一瞬の自分との闘いに勝つ。その気概をもって、1年間川崎の為に働きかけます。そして今日まで川崎青年会議所の脈々と受け継がれる歴史と伝統を重んじ、克己心をもって理事長職を全うすることをお誓い申し上げ、2017年度の理事長としての所信とさせていただきます。